飯塚克味のホラー道 第149回『俺たちのアナコンダ』
1997年に製作され、アニマトロニクスとCGを見事に使い分け、日本でもヒットを記録した動物パニック映画『アナコンダ』。70年代に『ジョーズ』で火が点いたジャンルだが、本作の成功で、様々なスタジオが同様のジャンルに乗り込んだ。製作スタジオのソニー・ピクチャーズもすぐ続編を製作し、『アナコンダ2』(2004)は高評価を得たものの、『アナコンダ3』(2008)と『アナコンダ4』(2009)はDVDストレートの低予算作品になり、打ち止めとなった。だが、令和のこの時代にまさかの復活を遂げたのが、今回紹介する『俺たちのアナコンダ』だ。
結婚式で流すウェディングビデオを製作している会社でディレクターをしているダグ。そして彼の幼なじみで、売れない俳優のグリフ。『アナコンダ』を人生のバイブルとして崇める二人だが、現実ではモヤモヤするばかりの人生を送っていた。だがグリフが、たまたま続編製作の権利を手に入れたことで、『アナコンダ』のリメイク版を作ろうと計画が動き出す。ヒロインは、大昔、自主製作映画に出演してくれたクレア。そんな連中が、何とか資金を集めて、アマゾンで撮影を始めるが、本物の巨大なアナコンダが出現し、現場はパニックになってしまう。
よくもまあこんな企画が通ったな、と思わせてくれる話だが、普通に続編を作っても先が読めてしまうので、映画の舞台裏を見せながら、本家のパロディ的な作りにしたのは大正解だろう。因みに筆者は本作を観ながら、『ムカデ人間2』(2011)を思い出した。あれも第1作が大好きな人物が主人公で、映画みたいなことをしたいと狂っていくのだが、本作も引けを取らない出来になっている。すでに昨年末に海外では公開され、世界興収が1億ドルを超えている大ヒットを記録した。
主演のダグはジャック・ブラック。いつ何をやってもジャック・ブラックはジャック・ブラックなのだが、今回もしっかり観客の求める姿を見せてくれる。グリフはリブートした『ゴーストバスターズ』シリーズ(2020~)や『アントマン』シリーズ(2015~)のポール・ラッド。肩の力を抜いた演技が映画の中身にピッタリ。ヒロインのクレアにはタンディから名を改めたタンディウェ・ニュートン。カメラマン役にはスティーヴ・ザーンというツボを押さえたキャスト陣が、バカバカしい内容に真剣に取り組んでいる。監督は『マッシブ・タレント』(2022)で落ち目のニコラス・ケイジをニコラス・ケイジ自身に演じさせ、新境地を開かせたトム・ゴーミカン。
開き直った作りの本作なのだが、あちこちに映画好きを喜ばせる用意がしてあるのも見どころだ。ダグのオフィスにはダリオ・アルジェントの『インフェルノ』(1980)のポスターが貼ってあるし、すでに公式が明かしているが、ゲストスターの登場も用意されている。また立派な船を借りて、わざわざジャングルに行くのに、いくら自主製作と言っても、この規模の撮影クルーはないだろうとツッコミを入れたくなるのも、わざとやってる感があって素晴らしい。後半に行くに従って、雑に作っているようにも見えるのだが、これも恐らく狙いだろう。著作権や、スタジオに対しての皮肉も盛りだくさん。映画館で大いに笑ってほしい。
関連記事:最新おすすめホラー映画はこれだ! 【飯塚克味のホラー道】
飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【作品情報】
俺たちのアナコンダ
2026年4月3日(金) 映画館にて公開